はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

階段井戸

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3月にインドに行った際に、たいへん幸運なことに、ニューデリーの高層ビルが建ち並ぶエリアにひょっこり存在する階段井戸「アグラーセン・キ・バオリ」に連れて行っていただいた。地表の風景とのコントラストが凄まじいこの階段井戸からは、インドの構築環境のすごさを思い知った。

そもそも階段井戸というインフラの存在を知ったのは、クリストファー・ノーランによるバットマン映画『ダークナイト ライジング』(2012)の中で、主役のブルース・ウェインが幽閉される「奈落」と呼ばれる場所がきっかけだ。このロケ地になったのが、インド西部のラージャスターン州ジャイプル近郊にある階段井戸「チャンド・バオリ」だ。その魅力にすっかり魅了されてしまい、ネット上で写真を検索してはニヤニヤ眺めていた。

2年ほど前には「The Vanishing Stepwells of India」という大型本を入手するに至り、インドにはこんなにもたくさんの階段井戸があるのかと、やはりニヤニヤ眺めていた。この書籍は写真集としては少し不満があるけれど、およそ80の階段井戸について写真とともに解説が掲載されていて、資料的価値は高いと思うよ。それぞれの緯度経度も示されているし。インドは気候や地形を考えてみても、水源の確保がたいへんそうだなあと思うが、こんな施設がたくさんあることを知るとその印象がいっそう強まるね。

「アグラーセン・キ・バオリ」は、地下なのに見事なアーチや柱などの建築表現がしっかり施されていて、なんともムズムズする。そのあたりからも、莫大なエネルギーを投じてつくり上げられたってことが感じられる。14世紀頃に再建されたものらしいが、前述の書籍には5千年前の伝説に遡るかもなんて記載もあったりする。そして現在では、ものすごく多くの人々の憩いの場になっていたよ。下の方はコウモリの糞の臭いがきつかったけど、なかなか得がたい素晴らしい体験をさせていただいたなあ。

The Vanishing Stepwells of India

The Vanishing Stepwells of India