はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

用水の恩恵

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三島市街地を貫流する源兵衛川。いろんな賞を受賞している有名物件なので、ずいぶん前から見に行かなきゃと思っていたのだが、1ヶ月ほど前にようやく実行した。大きな声では言いにくいが、ここの写真や論評などはチラホラ見ていたのに、どこかピンときていなかった。実際に行くと、そのモヤモヤの要因はわりとすぐわかった。

親水性ってのはこういうことなのかと思い知らされる空間が連続している一方で、反射的に一般的な川、つまり洪水時の排水路として活躍する河川のイメージで捉えていたのだ。阻害物っぽい飛び石ブロックや水面に接近する桟橋や、そもそも遊歩道に柵がないということなどが、すぐに飲み込めなかったんだな。

そう。源兵衛川はもともと農業用水路なんだね。だから管理用通路としての飛び石という捉え方が可能なんだね。現在は上流の工場排水の水量をコントロールしているらしいが、元を正せば富士の湧水なわけだ。どおりでやたらと冷たいわけだ。どおりで下流に広々とした温水池があるわけだ。どおりで洪水対応の要素が見当たらないわけだ。

河川や農業の制度の隙間をかいくぐって、市民ファーストの空間を作り続けているって、やはりすごいよことだねえ。感激とともにせせらぎの居心地よさが響き合い、ずいぶんスケジュールが後ろにきつくなっちゃった。この源兵衛川が、ほんの30年近く前までは悪臭がするドブ川だったなんて、まったく想像できないな。やり方と肝の据え方次第でいろんな取り組みができるんだな。