はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

廃天井川という器

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滋賀県の草津市に、江戸時代から引き継がれた都市内の天井川の跡地という、極めて特殊な環境に立地している帯状の公園がある。「de愛ひろば」と名付けられた公園は、中央部にいると両側が囲まれたスリバチ状の窪地なんだけど、両端部に行くと街を見下ろすことができる高台だったりする。これが実に不思議な空間体験が得られる。長時間にわたって堪能したけど、何度でもクラクラできたよ。

細長い空間にはスタイリッシュでシャープなテイスト、手作り感溢れるフレンドリーなテイスト、なにも考えていない安っぽいテイストなど、さまざまなデザイン要素がてんこ盛りに詰め込まれている印象だった。しかし、時間帯によって属性が異なる多くの市民が集い、憩い、遊んでいる様子を目の当たりにすると、カオス的な状況も賑わいを生み出す大事な要因になっていることを意識できた。

それってもしかすると、都市の中心にあるのに外界から遮断されている囲繞空間だからこそ実現できることかもしれない。さらに、市民自らが手をかけて、自らが使う空間をつくるという民主的な姿勢も強く感じた。天井川によって長い間分断されていた都市を、現代的な合意形成手法を取り入れた公園によって再定義しているのかね。まあこの手の話は、体験を共有しないと、なかなか伝わらないよなあ。