はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

イギリスの大偉人

f:id:hachim:20200130175935j:plain

イギリスの公共放送局であるBBCは2002年、「100名の偉大なイギリス人(100 Greatest Britons)」というランキングを発表した。その当時、僕のまわりがざわついたことをなんとなく憶えている。なにしろ、超有名人を押さえて第2位となった人物が土木技術者のイザムバード・キングダム・ブルネル(Isambard Kingdom Brunel、1806-1859)だったのだ。

ウィキペディアの当該ページによると、シリーズ番組制作のために投票と討論によって決定されたという。とりあえずトップ10を見てみると、1位:チャーチル、2位:ブルネル、3位:ダイアナ元妃、4位:ダーウィン、5位:シェイクスピア、6位:ニュートン、7位:エリザベス1世、8位:ジョン・レノン、9位:ネルソン提督、10位:クロムウェルとなっている。参考までに、スティーブン・ホーキングは25位、ナイチンゲールは52位、フレディー・マーキュリーは58位、チャップリンは66位だ。ちなみに、モンティ・パイソンのメンバーは一人も入っていない。どうやらブルネル大学の学生による組織票があったようだが、それを踏まえても、土木技術者が一時期トップ争いをしていたという現実は、なかなか理解しがたいところだ。

ブルネルの父マークは、シールド工法を開発してテムズトンネルを成功に導いた人物だ。その息子は父の後を継ぐように鉄道技師となり、橋梁、トンネル、駅舎などの設計を行い、さらには大陸横断蒸気船も開発した。そのブルネルがBBCのランキングに入ったのは、イギリス人の誇りであろう産業革命を支えた人物として評価されたんじゃないだろうかね。産業革命の本質は、人と物の大量高速移動に由来している気がするし、それを実現した鉄道技術が評価されるのは自然なことなのかもしれない。まあ日本ではこんな現象は起こらないだろうな。

そのブルネルが設計したロイヤルアルバート橋は、昨年末に強行したイギリス旅行の最初の巡礼地とした。プリマスとサルタッシュを結ぶ2連のレンズトラス橋という独特のフォルムを有する大迫力の橋で、1859年に完成した。日本では安政の大獄が起こっていた頃だ。ブルネルはこの橋の開通式への出席もかなわぬまま、同年に亡くなった。その時に掲げられたという橋門工のプレートに、しっかり名前が刻まれていることを確認した。この橋を一通り見上げたのちに、真横からたっぷり眺められるというテイマー橋の歩道に行こうとしたのだが、メンテナンスのためか通行止めになっていた。たいへん落胆したのだが、僕の橋梁巡礼は成立したことにしてもいいよね。