はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

構造

バカっぽい浮き橋

オランダ南部にあるベルヘン・オプ・ゾーム(Bergen op Zoom)という港街は、軍事戦略的要衝だったようで、星形要塞の名残がある。そのひとつが18世紀初めにつくられた「Ravelijn op den Zoom」という堀に囲まれた稜堡。1930年に木橋がひとつ架けられたが、…

“a”という歩道橋

大阪の天王寺駅前にかかるペデストリアンデッキ『鮨屋萬助・阿倍野歩道橋』は、なかなかファンキーだった。ネーミングライツによる名称、既設橋の解体が絡む複雑な架設計画、レベルが異なる周辺の建物との接続、線形や幅員が変化する桁と複雑な形状の屋根が一…

言語化が難しい解き方

当然のことながら、『ヨーロッパのドボクを見に行こう』に収録できなかった物件が多数存在している。検討しながら涙を流してカットしたものは、ブログやら講演のスライドやらで紹介することで供養する場合も多い。それでも極めて残念な気持ちを持っているの…

吊られるリング

オランダのアイントホーフェンの町はずれに、ホーフェンリング(Hovenring)という円形自転車専用橋がある。僕がこの街に住んでいた2011年にはまだできていなかったので、昨年のお正月のオランダ旅行の際に、強引に行程にねじ込んで見に行ってきた。 70mのタ…

セクシー網タイツ

博物館の王様と言えば、大英博物館だろう。古今東西のアーカイブの充実っぷりは、想像をはるかに超えていた。各種の侵略を繰り返しながら略奪してきたものだろう、という側面も窺えるが、ここだからこそしっかりアーカイブされているという厳然たる事実も目…

後付けの屋根

大英博物館やルーブル美術館をはじめとする欧州各地の古いゴージャス建築では、その中庭に後からガラス屋根を設置することで、天候や季節に左右されない内部空間として活用することが増えてきた。しかも、その屋根構造そのものがひとつの見どころとして成立…

薄さと細さの意味

スイスの構造設計家のクリスチャン・メンがデザインしたズンニベルク橋。橋梁ファンはマイヤールのサルギナトーベル橋の巡礼とセットで訪れる橋だ。床版から上のケーブルの位置がとても低いのでエクストラドーズド形式にも思えるけど、どうなんだろうか。ぺ…

セットもの

スイスのマルティニという街のやや北に、ローヌ川を跨ぐ「サン・モーリス橋」という高速道路の橋がある。3年半前、スイスのダム巡りのために画面奥側から走行してきた際に、これは!と思ってすぐさま高速道路を降りて見に行った。 これがなかなか面白く、ト…

脅威の薄さ

昨年の年始のオランダ旅行の際には、ズウォレという街にローラン・ネイが設計したできたばかりの歩道橋「Rodetorenbrug」を見に行った。ネイ事務所のサイトの写真を見ても、その薄さというか軽さというか儚さがCGとしか思えず、実際に見て確かめなければと…

軽いアーチ

今年の正月に強行したオランダ紀行では、ナイメーヘンという街に一泊した。翌朝はとりあえずこの街のシンボル的橋梁であるWaalbrugを見に行ったのだが、その近くに架かっている歩道橋を目ざとく見つけ、思わず駆け寄った。 ワンスパンのアーチリブに階段が設…

床版レス歩道橋

橋梁における「床版(しょうばん)」とは、文字通り大地の代替物としての「床」のことであり、彼方と此方を結びつける橋梁の本質の要素とも言える。ちなみに床版を支えるものが「桁」であり、桁を支えるものが「橋脚」や「橋台」と理解しておけばいいだろう…

アーチ風トラス

オランダにあるロシアの旅客機(飛行機に泊まる)に宿泊した翌日、高速道路を北上してズウォレという街に向かった。街に近づいてきたので駐車場の心配をしていたら、川を渡る際に右手の遠方に赤い橋がチラリと見えた。むむっ?あれはもしや、事前のチェック…

おかしな斜張橋

先日の記事(岬の上の小さな村)を書く際に「Lussia Bridge」を軽く調べたら、イタリアのウィキペディアに「Ponte Morandi」というタイトルの項目が掲載されていたので、それを別名と認識していた。 先ほど、その橋のことがTwitterで軽く話題になったので、…

不思議アーチ

斜角(スキュー)が大きいアーチ橋は、高確率でおかしなことになりやすい。上路アーチ橋ならまだしも(トリックアーチ)、下路アーチだと目を疑う構造物(ねじれた関係)になることもある。 美瑛町の白金温泉に架かる歩道橋も、アーチ部材が細いパイプという…

古城の軽い橋

カルロ・スカルパが手がけたヴェローナの「カステルヴェッキオ」には度肝を抜かれた。古城を改修した市立美術館なんだけど、動線や空間構成からディテールに至るまで、全く隙のない圧倒的な質の高さを体験することができるので、近くに行くことがあればぜひ…

ボックス基礎

先日の「切通し交差点」の風景を望む歩道橋の基礎が、なんだかおかしなことになっているよ。久地円筒分水から続く用水の直上に歩道橋が架かけられているために、「ボックスカルバートが基礎」になっているのだ。「ボックスカルバートの基礎」という意味では…

高度な仮橋

牛伏川フランス式階段工の上流に、自衛隊クラスの技術力が駆使されたのであろう、かっこいい仮橋があった。桁はアルミ製梯子。片側にはV字橋脚を延長してつくられた高欄まである。もちろん僕は腰が引けてしまい、渡ることができなかったよ。

趣味趣向の差異

先日、ダムマニアの方4名とお話を伺う機会があったのだが、どの形式が好きか尋ねたところ、3名が重力式コンクリートダム、1名がフィルダムと答えられた。僕が好きなアーチダムやバットレスダムが挙がらなかったことが意外に思った。たしかに重力や物量によっ…

アテンザの橋

正月早々、またマツダがやってくれた。アテンザの新しいTVCMのロケ地になっているフランスの「ミヨー橋(Millau Viaduct, 2004)」がかっこよすぎるのだ。 前作のコントラダムでもそうだったけど、クルマを引き立てるためにドボク的ロケ地を選定したというよ…

アーチ界の重鎮

長崎の佐世保市と西海市の境界である伊ノ浦(針尾)瀬戸は、とても贅沢な観光ポイントだね。西海橋と新西海橋の2つの素敵なアーチ橋が架かっているし、びっくりするぐらい潮の流れが速くて、うまくすれば渦潮も見られるらしいし、新西海橋からは針尾送信所…

白くて薄い太鼓

周辺の植生さえそれっぽければ、「これ、スイスの山奥で見かけたきれいな橋だよ」と言ってもそのまま通りそうな橋。アーチ状の薄いコンクリート床版がそのまま構造部材になっていて、ミニマルで緊張感のある見事なフォルムが素敵すぎる。こんな切れ味鋭い構…

構造の遊び

朝に羽田を出発して北九州に入り、レンタカーでいわゆる近代化土木遺産をいくつかまわって佐世保まで行くという、わりと無茶苦茶な行程ではあったけど、ずっと見てみたかった弓張岳展望台になんとか日没直前に到着した。 これは1965(昭和40)年につくられた…

オリンピックドーム

1960年のローマオリンピックの会場としてつくられたPalazzetto dello Sport(完成は1957年)。トリノのTorino Esposizioniと同様、イタリア人構造デザイナーのPier Luigi Nerviが手がけた物件だ。このドーム屋根のコンクリートのリブがあまりにも美しく整い…

展示物のない展示空間

かつてトリノモーターショーが開かれていたというTorino Esposizioniの内部空間。このドームはPier Luigi Nerviの設計により1949年に建設されたものだ。ネルヴィの屋根が見たくてトリノに来たのだ、どうしてもこの目で見て帰らなければ、という気分でヴァレ…

渓谷を渡る板

先月のスイス訪問では、重要な巡礼地として東部のViamala渓谷に架かるPunt da Suransunsも参拝した。これはユルグ・コンツェットが設計した吊床版歩道橋で、これまでも何度か噂には聞いていた。なんでもまじめにハイキングをしなければ見ることができないと…

スイス橋梁巡礼

今回の橋梁巡礼は、いよいよスイス。満を持して、と言いたいところだけれど、行程の組み立てが非常に難しく、かなりハードな巡礼スケジュールになっている。なにしろ、ロベール・マイヤール、クリスチャン・メン、ユルグ・コンツェットなど、スイスには見る…

かっこいい技術

マインツの北隣、ヴィースバーデンに架かるスパン約100mのアーチ橋。1967年当時の最新技術である軽量コンクリートを用いたPC構造および両側からの張り出し工法による架設といった点で、技術的にも価値があるらしいのだけど、見た目も非常に素敵。 地覆のライ…

二重らせん展望台

シュトゥットガルトの公園の高台にあるキレスベルクタワー。なんなんだこの浮遊感は。二重らせんの階段によってより不思議な雰囲気が増している。見ているだけでひやひやするが、登ってみるとさらにひやひやする。だって、結構揺れるんだもの。 よく見ると、…

板のバックステイ

ネイ事務所の方から、KortrijkにあるS字の線形が美しい歩道橋College橋のすぐ近くに最近できた道路橋はグレイシュ事務所絡みだというお話しを伺っていたので、しばらくネット上で調べていた。しかし、2010年秋に開通したばかりという新しさな上に、英語と蘭…

異種格闘技戦

デュッセルドルフを流れるライン川に架かるハム・ノイス鉄道橋。メインスパンをバスケットハンドル型のアーチリブで補剛している2径間連続ワーレントラスという、極めてユニークな構造。アーチとトラスの緊張感みなぎる異種格闘技戦だ。 こんなややこしい混…