はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

豪華な装飾

パリのセーヌ川に架かる豪華絢爛なアーチ橋、アレクサンダー三世橋。1900年に開催されたパリ万国に際して、ロシア皇帝のニコライ二世が寄贈した橋である。
100年以上前に100m以上のスパンを実現した技術もさることながら、装飾がとんでもなくすごい。あちこちに彫像が取り付けられ、レリーフが施され、金ピカに塗装されている。現代社会でこれと同じようなことを、同じレベルでやろうとすると、たいへんな目にあうだろうね。

この橋が建設された時代、橋梁に装飾することは正しい価値観だった。しかも、万博は国力を誇示する場だった。だからこの橋には、当時の極上の装飾が施されたのだ。その結果、パリの街の歴史に溶け込む美術品として成功しているのだ。
現在の橋梁デザインの価値観は、明らかに当時とは違う。身奇麗に、質素に、構造本来の姿を引き立てる方向にするのが素直だろう。そのためには、素の姿が良くなければならない。つまり、エンジニアリングが良くなければ、失敗する。

スタート地点とゴール地点を見誤り、貧乏くさくなったショボい橋梁は、数知れない。