はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

設計の意図

住宅地の中のコンクリート擁壁。
大きなスリットを組み合わせて面に表情を持たせている。上下に違いをもたせて、壁面を視覚的に分割するといった工夫がなされている。
しかし結果は、少々みっともないことになっている。外観への工夫が逆方向に作用している。波状になったコンクリートの打ち継ぎが見える。隅角部の欠損などの施工不良を隠すための補修跡が痛々しい。おまけに、汚れも盛大に付着している。
設計者側からすると、“施工が悪い”と言いたくなることがよくあるけど、それはちょっとプロっぽくない態度だよね。その前に、設計の意図を施工者に伝えるための“美しい図面”を描く努力をしないとね。そうすれば、施工のしやすさや経年変化の予測についても、もう少し踏み込んで考えられると思う。当然のことだが、現場や実物をよく知らないで設計すると、まず失敗する。というか、僕は多々失敗した。