はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

復活した博物館


ベルリンの街はどこをどう見ても戦争の傷から逃れられないようになっている。そこに気がつくとどうしても気分が重たくなってしまうが、それを乗り越える強烈なパワーも同時に感じられるので、感情が激しく揺さぶられる。
2009年10月に70年ぶり再開した新博物館(neues museum)もそうした建築物のひとつ。1855年に建設された新博物館は、第二次大戦の空爆で壊滅的な被害を受けてずっと廃墟のまま放置されていたのだけど、東西ドイツの統一後に修復計画が立てられ、コンペで第二位となったデヴィッド・チッパーフィールドの案に基づいて12年の歳月をかけて修復したのだそうな。廃墟として残されたパーツをできる限り使いながら、本来の姿を取り戻すという明快なコンセプトに従って。
いやはや、これがすさまじい気合いの入りよう。手抜きは一切感じられない緻密な空間づくり。どこが再利用でどこが修復でどこが新築かよくわからないほどに調和している。建築家の作家性を極端に抑制して新古典主義のオリジナルを復元しているはずなのに、細やかな手仕事から生まれるぬくもり、戦争の悲惨さが漂う重厚な廃墟感、モダンなシャープさなども兼ね備えている。これはいいものを見せていただいた。
ベルリンを訪問される方にはこの博物館の見学を強くおすすめする。展示内容も魅力的なので、なるべく時間にゆとりを持ったほうがいいね。僕らはかなりすっ飛ばしてしまったので、ちゃんと消化できていないんだよね。なおベルリン在住の友人によると、チケット売り場はかなり混雑するので公式サイトから時間指定入場券を購入するのがよいとのことだよ。