稚内に出張に行ったついでに宗谷丘陵に立ち寄ってみると、予想をはるかに超えた興奮状態に陥った。なんだこの地形、なんだこの牧場、なんだこの風力発電。これまで見たことがない風景が延々と広がっており、これをどのように解釈すればいいのか全くわからずにオロオロしつつも、ドキドキワクワクが抑えられなかった。
牧草と笹に覆われたつるんとした稜線と、低木がひっそりと繁茂する入り組んだ谷が、なんともモヤモヤと組み合わさっている。この地形は、1〜2万年前の氷河期に形成された「周氷河地形」というものらしい。元々あった樹木は山火事によって焼失し、以来、もともと極端に気温が低い地域であることと、荒々しく吹きすさぶ風が邪魔をして、植生が回復できない状況のようだ。まあそのおかげで周氷河地形を直接拝めるってわけだ。
そんな地形の尾根部分は、「宗谷岬牧場」という宗谷黒牛ブランドの肉牛牧場として利用されている。放牧された牛や点在する牧草ロールなどの牧歌的な風景は、いかにも北海道らしい伸びやかな雰囲気である。そこに大量に群生している風車群を除けば。
「宗谷岬ウインドファーム」は2005年に操業が開始され、現在は57基の風車が稼働しているようだ。クレーンも見えたので、まだ増えるのかもしれない。施工のしやすさや管理用道路の関係、つまり地形で設置位置が決まるのであろう、そのレイアウトに規則性や秩序は感じられない。
個人的には現代の風力発電の風景を、まだしっかり飲み込めていない。古典的な風車の風景ならばある程度理解できるが。しかし、ここは妙に風景に調和しているように感じた。地形の変化が豊かなことや人の営みがある土地利用であることから、風景として成立する可能性がよりいっそう感じられる。すでに脳のどこかが麻痺しているのだけかもしれないが。