はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

崩れた土砂の崩れ

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たいへんありがたいことに、滅多なことでは立ち入ることができない日本アルプスの巨大スリバチ「立山カルデラ」に潜入させていただいた。このエリアは関係者以外立入禁止のうえ、11月から5月は雪に閉ざされてしまう超ハードな防災最前線の現場なのだ。一般人の見学は立山カルデラ砂防博物館が開催している「立山カルデラ砂防体験学習会」に参加すれば可能なのだが、その抽選はなかなかの高倍率。しかも、天候が悪ければ、即中止になるし。関東から遠いこともあり、気安く行けるものではない。そんなプレミアムな現場を取材する機会がいただけたので、そりゃ狂喜乱舞するよねえ。

急流荒廃河川として有名な常願寺川の上流に向かって、スイッチバックを繰り返しながらぐんぐん登るトロッコ人車に揺られること、およそ1時間半。夏限定の幻の村「水谷平」でワゴン車に乗り換えて、いよいよ立山カルデラの内部に入ると、圧倒的なスケールの崩壊空間が現れた。崩壊斜面がツノツノしているし、明らかに見たことがない別天地の雰囲気である。

1858(安政5)年の飛越地震によって、カルデラの外輪にあった「鳶山」の一部が崩壊した。その時発生した土砂の量は4億m³と言われ、そのうちの半分は常願寺川を越えて富山市まで達し、壊滅的な被害を引き起こしたという。しかし、半分の約2m³が現在もカルデラに残っている。そして、その堆積土砂があらためて崩壊している、つまり、きりがない状況なのだ。

それでも二度と大災害が起きないよう、立山砂防に関わる人々は危険と隣り合わせの場所で日々奮闘している。その様子を目の当たりにして、胸がいっぱいになったよ。