はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

砂防の聖地

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先月の中頃に訪問した立山カルデラのハイライトのひとつは、文句なしにカルデラ出口の狭隘な谷の要である「白岩堰堤」だ。本気で世界遺産にすべき人類の叡智の結晶だよ。すでに重要文化財には指定されているけどね。もちろん、観光地化するわけにはいかないので、そのへんは冷静によく考えようね。

トータルの落差が100mを越える国内随一の砂防堰堤は、1939(昭和14)年に完成した。常願寺川の砂防は、明治の頃から対策を切望されて、数々の困難を乗り越えてようやく白岩堰堤が実現したのだ。近代砂防の父とされる赤木正雄の思想が反映された施設だが、ムルデル、デ・レーケ、青山士など、錚々たるメンバーも多かれ少なかれ関わっているというのが興味深い。

谷の中央部にそそり立つ導水壁の上から圧倒的な水の流れを見ると、床固の一カ所にものすごい水量が集中していることがわかる。天端の一部が大きく損傷しているのだ。災害時の転石で衝撃が加わった上に、絶え間なく流れる土砂で削り取られているのだろう。補修の予定を尋ねたところ、機能を損なうものではないので現状のまま運用しているとのこと。被災することが前提の施設って、やはり覚悟が違うんだなあ。なお、床固の上部にあるスリットは、北陸電力による水力発電のための取水工とのこと。転んでもただでは起きない精神も大事だね。