先月、福井に出張したときのこと。とある寄合に出席していたところ、知人に福井神社にはもう行ったよねと、スマホの写真を見せられながら問われた。これは見ておかねばならない物件だよなあと思い、大いに悩んだ末に寄合を中座して現地に急行した。
この神社の建物は全てコンクリートの柱と梁で構成されており、水平と垂直がいちいちビシッと決められている。装飾性はほとんど認められない。大鳥居に至っては、見たことのないプロポーションと形態である。自分の中の神社像を軽々と凌駕してしまい、おろおろと途方に暮れた。こうした興奮は大好物なので、結果的には大きな満足感に包まれた。
境内にあった案内板によると、戦災で消失した総檜造りの壮麗な社殿を1957(昭和32)年に再建したとのこと。設計は「福井大学工学部」とあり、個人名は記載されていない。なんとなく想起される丹下健三による広島平和記念資料館は1955(昭和30)年なので、そういう時代だったんだろうなあと感じられる。
建築の世界ではどんな評判なんだろうかねえとネットを徘徊してみたが、まとまった情報がなかなか見当たらなかった。狛犬が普通に鎮座していたり、写真撮影地点のすぐ左側に伝統的な形態の鳥居が新たに設置されていたり、福井の観光案内にはほとんど記載がなかったりと、なかなか不遇な神社のようだね。
余談だが、福井神社を見た後には予定どおりの電車に乗って千葉に戻った。そこでは、寄合の閉会式にちゃんと出席された方々と当たり前のように出くわしてしまい、とても気まずい気分を味わった。