はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

見方を変えるトレーニング法

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ものの見方を変えるという行為は、様々な場面でとても重要になる。何かをデザインするときや、アイデアを生み出すときなどはもちろん、見方を変えることによって気分を高めたり、生活を楽んだりすることだってできる。吸収力が高い若い方々に向けて、僕は折りにふれてその重要性を随所にちりばめて発信してきたつもりだし、これからも言い続けるつもり。

10年近く前からその力を高める有効なトレーニング方法を実験的に模索しているのだけど、これというもの見出すことはなかなか難しい。人によってポイントが違うのは当然としても、僕の場合は街に出て「壁」の写真を撮ることが効果的なようだ。そんなことを、金曜日に行ったフィールドワークで実感したな。

今回ゲストとしてお招きした人物は、「壁の本」や「地形スイーツ」でおなじみの杉浦貴美子さん。彼女の壁サイト「壁 wall」は必見だよ。久しぶりに彼女と一緒に街を歩き、相変わらずのキレキレな観点と、相変わらずの危なっかしさにやられて、ずっとテンションが上がりっぱなしだった。何人かの若者を連れて行ったのだけど、彼らのことはすっかりほったらかしてしまった。まあそれも彼らの勉強ということで許してもらおう。

このフィールドワークを通じて、自分は「まずは引いて全体像を多次元的に把握すべし」という観念に支配されていたことを自覚した。まあそれも悪い姿勢ではないと思うのだが、それだけでは見方の方向が固定化されてしまう危険性がある。以前からこのことには気付いていたはずなのに、何年経っても彼女の「平面へのまなざし」や「対象への踏み込み」を、まだまだ自分のものとして習得できていないことを思い知らされたな。

例えば、上の写真のような魅力に溢れる「壁面」を見つけたら、僕はまず全体像を眺めていったん写真を撮り、その後に細部の写真を撮っていた。ところが杉浦さんは一気に壁ににじり寄って、テープの跡やネジ頭や錆の様子などのディテールをしげしげと観察するか、迷うことなくいきなりシャッターを切るのだ。スケールと距離感の扱い方が固定的ではなく、自由自在なんだね。フィールドワークの後半は、そのことを意識的に真似してみたら、自分の中の何かが変わりそうな予感があったよ。なかなかうまくできないんだけど。

いずれにしても、フィールドワークの達人と一緒に歩くという体験は、自分の視野を一気に拡張する起爆剤になり得るので、本当に楽しいね。ちなみに「壁の本」は、すでに新品を入手することは困難なようなので、古本も視野に入れて早めに入手することを強くお勧めする。

 

壁の本

壁の本