先週、ようやく東京オペラシティ・アートギャラリーで開催されている『ザハ・ハディド』に行ってきた。4年前の欧州在住時に3つのザハ空間を体験したことがあるため、展示内容にリアリティーを感じつつ、過去から現在進行中の仕事までを一気に堪能できて、高い満足感を得た。
あらためてザハの圧倒的な造形力は、本当に凄まじいと思った。同様にすごい造形を実践するカラトラバは「構造」をツールとしているが、ザハのツールは「流体」と言えそうな気がする。結果的に「動感」がすごいし。こうした造形って、三面図で思考する人には絶対に生み出せないよね。このアプローチは、プロダクトデザインやカーデザインのそれに重なって見える。つまり「建築的」ではない。そう考えると、多くの建築家たちの拒否反応の根っこが見えた気がするな。きっと彼らは、あの圧倒的な造形力に嫉妬しているんだろうなあ。
ポスターカラー?を使っている平面構成は、なんとも懐かしい感じがあった。おそらく学生時代に教わったバウハウスのカンディンスキーを思い起こしたためだろうか。あの手の平面構成は、立体のイメージを強く持ってなければ実現できないよね。やはり立体物のデザインをやる以上、立体や空間が苦手とか言っている場合ではないと、あらためて感じた。
展示内容が面白かった一方で、スペースに対して情報が多すぎる印象があった。ザハ特有のスピード感が少々削がれてしまっているような。まあ情報の密度感を表現したと考えるといいのかもしれない。プロジェクションの間は広々としてよかったけど、後ろの照明器具の作品の明かりがずいぶん邪魔をしているように思えた。
ザハ建築は、勢いのある都市や地域でボコボコつくられている。これって、少し前のカラトラバと同じ雰囲気なんじゃないかな。余計なお世話だろうけど、バブル後の維持管理費はどうするの?という具合にならなきゃいいけど。どうもカラトラバは各地でたいへんなことになっているみたいだもんね。