大阪の天王寺駅前にかかるペデストリアンデッキ『鮨屋萬助・阿倍野歩道橋』は、なかなかファンキーだった。ネーミングライツによる名称、既設橋の解体が絡む複雑な架設計画、レベルが異なる周辺の建物との接続、線形や幅員が変化する桁と複雑な形状の屋根が一体になったトラス構造など、見どころ満載だ。
最大のポイントは、上から見ると「阿倍野」のイニシャルの『a』の字になっていることだね。なんとも大阪らしいよね。ところが、上からすっきり見える場所はほとんどない。あべのハルカスのエレベーターもチェックしたのだが、視点場として良好なものではなかった。さらに、重要な歩行動線であっても屋根がかかっていない箇所がいくつかあり、ちょうど雨の日だったためにリアルにびっくりするという体感ができた。『a』を実現するために、あえて割り切ってそうしているのだろうな。見えないけど。
このデザインには賛否両論あるらしいが、開き直ってグイグイやっちゃった空気に、個人的には好印象を持った。トラス部材のコントラスト、排水の処理、橋脚の存在感低減など、いろんなところに気を遣ってまとめられているし。それに、なんとなく好物のダッチデザインのテイストを感じちゃったし。きっと設計も施工もたいへんだったんだろうなあ。維持管理もそれなりに手がかかるんだろうなあ。