はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

バカっぽい浮き橋

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オランダ南部にあるベルヘン・オプ・ゾーム(Bergen op Zoom)という港街は、軍事戦略的要衝だったようで、星形要塞の名残がある。そのひとつが18世紀初めにつくられた「Ravelijn op den Zoom」という堀に囲まれた稜堡。1930年に木橋がひとつ架けられたが、その反対側にも緊急用の通路がもうひとつ必要になったらしい。

そこで昨年、稜堡の存在をググッと引き立てる浮体橋のラベリン橋(Ravelijnbrug)がつくられた。なんと手すりがないどころか、中央部が高いアーチ型断面だ。端部はほぼ水面に一致している。はじめから渡る人を落とす気満々で、手ぐすね引いて待っているようにしか見えないよね。どうやら木製床版の下に仕込まれたポリエチレンのパイプによって浮かせているようだ。

やはり実際に体験してみないとなあと思い、この夏のオランダ旅行の行程に組み込み、立ち寄ってきた。これが大当たり。思っていた以上にラインが立体的で、その魅力に顔が緩みっぱなしになってしまった。一通り外から眺めた後に、意を決しておそるおそる歩きはじめてみたが、思いのほか安定している。滑り止めが施された表面のグリップも良好。よほどはしゃがなければ問題なさそうだ。

ただ、要塞に到着してもドアが開いているわけでもないし、橋の上でゆっくり留まろうという気にもなれないので、あっさり引き返すほかはない。それでも、ダッチデザインの香りが濃厚に感じられるこの橋を体験する価値はあると思うな。