ローマ人が二千年前につくった南フランスの水道橋「ポン・デュ・ガール」のアーチを下から見ると、つくりが異なる石橋が並んでいることがわかる。写真の左側(上流側)がローマ人の手によるオリジナルであり、右側(下流側)がナポレオン3世の命による修復時に整備されたとされる19世紀の歩道橋だ。
同じ産地の石が使われているのか、材質感は全く違和感がなく、近寄らなければ一体の構造物に見える。しかし近づいてじっくり観察してみると、積み方の違いの他に、石の仕上げ方も違うことがわかる。ローマの石工職人が刻んだのだろうノミの痕跡がくっきり残ったワイルドな表面と、エッジの丁寧な面取りのコントラストに何度も身震いしたな。
ナポレオン3世から仕事を受注した職人たちも、きっとローマ人へのリスペクトとともに、程よい緊張感を持って仕事をしたんだろうなあ。