はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

人工物上の天然湖沼

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先日、某所でお話ししたとき、インフラ景観の魅力について「人知を越える自然に必死に抵抗するための叡智の集積」といった表現を用いたところ、来場者の方に猛然と抗議された。その時は彼のお怒りポイントがさっぱりわからなかったが、おそらく、土木事業について回る自然破壊的な「図々しさ」や「おこがましさ」を感じさせてしまったのだろうな。

もちろん僕の本意はその真逆で、「自然まじすげえ、でも、ほんの少しだけ人間社会を成立させてくだされ」という、自然に対する畏怖心が前提になっている。これまで土木に大なり小なり関わってきた人間としては当たり前すぎて、言葉足らずになっていたのかもしれないな。

上の写真は「洞爺湖有珠山ジオパーク」の中にある「西新山沼」。2000年の有珠山噴火時に、元国道230号の直上に出現した沼だ。下って上る窪地に水がたまったように見えるが、写真奥に向かって下っていた地形が「隆起」したのだ。こんなにもリアリティのない事象が自然のリアルなわけで、それらに対して必至に抵抗しなければ人間社会を維持することなど、瞬時たりともできないよねえ。

洞爺湖有珠山ジオパークが素晴らしいのは、広域にわたって被災時の姿をできるだけそのままとどめ、人間活動との対比によって自然活動をわかりやすく「展示」していることだ。おそらく、被災時に一人の死者も出さなかったということで実現できているんだろうな。このリアリティには気持ちが強く揺さぶられるので、ぜひとも北海道観光のメニューに加えていただきたい。