稚内港には1936(昭和11)年に建設された「北防波堤ドーム」と呼ばれる珍しいフォルムの防波堤がある。宗谷海峡の強烈な風と波を遮る半アーチ断面の覆いや、それを支える70本の列柱がえらく感動的。ふんわりカーブのリブが反復する回廊は、港内側に向けて解放される空間が形成されている。リブと壁が徐々に馴染んでいく様相や、柱同士をつなげる連続アーチなど、細心の注意を払って造形されている。
僕はかつて北海道に9年間も住んでいたのに、この魅力的なドームを訪問する機会をつくらなかった。いま考えると、アホだよな。土木学会誌表紙の取材で2013年の真夏にようやく行くことができたのだけど、冗談半分で持っていったダウンジャケットを着込まなければ、撮影が続行できないほど寒かった。最果ての地にある稚内港にこのドームが必要な理由の一端を、軟弱なスタンスながらも実感できたな。