昨年の秋に札幌に行ったとき、飛行機の窓から絵に描いたような扇状地を眺めることができた。胆沢川によって奥羽山脈が削られ、その土砂が放射状に堆積したというジオスケールのダイナミズムが、視覚的に理解できる。
このような地形はたいてい水はけがよく、土砂災害や洪水災害のリスクも比較的大きいので、広い土地を有効に使うには一手間も二手間も工夫が必要になる。ここの扇頂部には1953(昭和28)年に日本初のロックフィルダムの「石淵ダム」がつくられ、下流域の開発が実現していった。さらに2013(平成25)年に巨大な「胆沢ダム」によって上書きされて、石淵ダムは水没した。
実はこの地域、何度も訪問したことがあり、個人的にわりと詳しかった。もうだいぶ忘れちゃったけど。15年くらい前に、胆沢ダムの湖面を渡る橋梁の設計業務に関わっていたためだ。ところがその後、道路自体の計画が見直され、せっかく設計した橋梁はなかったことになった。そんなことを思い出しながら、計画地に何もないことを上空から確認した。かすかな悔しさとともに。