はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

お店で買えないアレ

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数年前に大学の授業で、「コンシューマー向けではない工業製品をひとつ選び、それをしっかり調べてデザインの切り口からまとめよ」というレポート課題を出したことがある。タイトルは「お店で買えないアレ」。中には面白い題材や切り口を見つけてくる学生もいたが、あまりピンと来ていなかった学生の方が多かったように思う。学生自身がユーザーや購入者の立場に立てるとそれなりにイメージできても、そうじゃないと、とたんにわかりにくくなっちゃうんだろうな。対象を選ぶ時点でスタックした学生も多かったし。

それはそうと「お店で買えないアレ」の多くは、あざとさは少ないけれど、洗練度が低く生々しいものが多いように感じる。それらのデザインは程度の差こそあれ、実際の利用者であるエンドユーザーよりも、購入者である管理者の方向を見ているのではないかね。デザインの決定原理は、要求される目的に対するストレートな機能性、生産や調達のしやすさなどのコスト、耐久性や可搬性などの維持管理のしやすさあたりが重要になってくるだろう。さらに、利用者からクレームが来ないってことも重要だろうな。

そんな「お店で買えないアレ」にも、素晴らしいデザインのものもたくさんある。開発チームの中にデザインへの理解者がいて、その重要性をお客さんたる発注者に説明できたのか、発注者にデザインにこだわる人がいて、開発チームにあれこれ要求したのか。そんなことを思うと、利用者としては楽しくなってくるよ。