ひとつ前の記事で、オランダのナイメーヘンに架かる橋「De Oversteek」の写真を取り上げた。柴田敏雄氏の写真展に感化されて、自分の写真もそれっぽくならないかあと思い、構造的な特徴を持つ部分をクローズアップして構図のバランスを再検討してみたり、ドラマチックな光の加減を探るためにパラメーターをいじったりしたのだ。
その作業はたしかに楽しかった。ところが、どうもムズムズが止まらない。やはりローラン・ネイが設計したこの橋をピックアップするのであれば、285mスパンという大スケールと、端部が二股に分かれて補剛桁に剛結される単弦アーチリブと、角度が変化しながら斜めに張られたケーブルと、平面と曲面をバランス良く織り交ぜている造形などを、同時に示さなきゃならんだろうと。
結局のところ、なにかを説明するために撮るというスタンスが、僕にとってはちょうどいいようだ。そこに固執してしまうのは、心当たりがある。
僕が大学生の時、恩師からある橋の写真を撮ってくるよう命じられた。すぐに現地に行ってバシャバシャと写真を撮り、自分としてはそこそこよく撮れたんじゃないかと思って現像に出した。数日後に上がってきたプリントをパラパラと見ながら、恩師は「使える写真がひとつもないですな」と言い放った。ショックでおろおろしていると、「心の中で短いコメントを添えながら写真を撮るように」というアドバイスとともに、再び撮りに行くように命じられた。
それからずっとそのつもりで写真を撮っている。数年前からはTwitterやInstagramなどで実際にショートコメントをつけてアップすることもしばしば。こうしてずっと続けているものは、そう簡単に鞍替えできるものではないね。もちろん幅を広げたいなあとは思っているけど。