わが家の近所には、小さいながらもゲリラ豪雨によってたまに氾濫してしまう「草野水路」がつくりあげたスリバチ地形がある。最近久しぶりにこのあたりを散歩し、スリバチの底と縁では風の温度や湿度が全く異なることが体感できた。そこに架かる「小仲台新橋」の高低差のあるアプローチが、水平垂直ラインの中に力強い斜めのラインが挿入されるなど、とても心に響いた。
河川の計画高水位で決められた護岸は周囲の地盤よりも高く、橋桁の下端もその高さをクリアするため、路面はグッと高い位置にしなければならない。歩行者の都合と自転車利用者の都合と周囲の住宅の都合に配慮した段差や斜路にしなければならない。河川に流入する排水管と河川に並行する排水管との整合性を取らなければならない。厳しい位置にあるマンホールを開閉可能な状態にしながら、橋梁の伸縮に追随する状態にしなければならない。
おそらくまだありそうな複雑で厳しい条件を一点に集約している姿は、なんとも言えない存在感とともに、(人によっては)愛おしさすら感じられる佇まいになっている。大山さんが指摘する「ままならなさ」という魅力だねえ。意図的にこれを造形するのは、なかなか難しいよなあ。