はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

まちの記憶の更新

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熊本市役所のすぐ近くのアーケード街にひょっこり姿を現した「ダンメン」が、たいへん見事で感激した。通行人の多い繁華街だったので視線が若干気になったんだけど、しばらく佇んでじっくり鑑賞せざるを得ない迫力だった。

建設以来はじめて露出したであろうコンクリートブロックによる図像として、木造二階建ての家屋のフォルムが鮮やかに浮かび上がっている。ビルの壁面全体をキャンバスと見立てると、テクスチャーの差異の現れ方が絶妙なバランスで構成されていることに気付く。ベニヤ板によってふさがれた窓、モルタルの奥にうっすらと感じられる柱と梁の存在、木造家屋の名残かもしれないやつれたトタンなど、見れば見るほど味わい深さが増してくる。

このまま手前側に新たなビルが建設されるのか、コンクリートブロックの表面を手当てしてからなのか、いずれにしてもかつての街並みの記憶を示すこの眺めは、すぐになくなってしまうだろう。そう考えると、とても幸運なタイミングでここを通ったという気分になってくる。うん、やはり人目を気にせずに鑑賞したことで、僕は得していたんだね。