はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

佐賀の水の礎

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佐賀平野は水に恵まれているわけではない。むしろ「照れば渇水、降れば洪水」と呼ばれてきた厳しい状況だ。広大な農地を潤し続ける水源を持つほどの大きな山はないし、干満差が大きい有明海は水害の被害をもたらすこともある。そんな環境の中で、人々は創意工夫を重ねながら水と付き合ってきた。つまり、利水と治水を土木技術によって両立させてきたのだ。

その象徴的な事例が、佐賀限定で「水の神様」と呼ばれている成富兵庫茂安(なりどみひょうごしげやす)の手による「石井樋(いしいび)」だ。嘉瀬川の水が山を下って佐賀平野に達する地点で勢いを弱め、大雨のときには遊水池に水を導いて洪水を防ぎ、同時に下流に広がる水田を潤す用水を確保して、さらにその水に土砂が入り込みにくくするという、いいとこ取りの画期的な水システム。もちろん当時のままではなく、随所に改修が施されているが、基本骨格は江戸時代初期につくられたというから驚愕する。

このすごさや面白さをいろんな人に伝えたいと思うのだけど、見た目からはわかりにくいってことがネックになってくる。水システムってのはいろんな施設が複合しているし、それぞれがたいへん地味なのだ。上の写真は石井樋の中でも最も特徴的な形態を持つ「象の鼻」と「天狗の鼻」。これだけ見ても、何のことだかわからないよなあ。橋やダムは単体で見てもある程度のことはわかるし、そもそも迫力あるもんねえ。それに比べちゃうと、なかなか難しいんだよな。