先月出張で札幌へ行くために、はじめて成田空港第3ターミナルを使った。かねてから見に行かねばなあと思っていたのだが、なんとなくズルズルしちゃってた。そもそも空港を使う時って、どうしても気持ちが焦ってしまうし、体力も温存しておきたくなるもんね。
この時は、せっかくの機会なのでしっかり見物しておこうと、時間に余裕があるバスで行った。降り立ったバスターミナルから、すでに最強のローコスト。つくり込んでやるもんかという意思が徹底されており、その媚びない姿勢に爽快感を覚えた。そこから続く昇降路や通路などでは、フェンスや手すりなどの人に近い部分の処理もとても上手にコストカットされていた。ここらへんは、下部工付検査路なんかに取り入れたい要素が満載で、土木方面の人たちにもすごく参考になると思ったな。もちろん、とても楽しみにしていた陸上トラックを模した動線誘導は、噂にたがわず素晴らしいものだった。ここを歩いているだけで、うっかり足早になってしまうし。これぞ高度な効率を求めるLCCの真骨頂だね。
思い起こせば、LCC専用ターミナルという衝撃を僕がはじめて受けたのは、2011年にライアン・エアで降り立ったマルセイユ・プロヴァンス空港だった。地中海リゾート感が全くないチープな空間に驚愕し、ヨーロッパのクラス分け意識を痛切に感じるとともに、まるで倉庫のようなLCC専用ターミナルでは自分のことを貨物と思った方が楽しいんだなと思ったりもした。
そんなこともあり、成田空港第3ターミナルはLCCの特性をしっかり読み解いて、そこに最適な質のデザインが施されていることがよくわかった。サイン類などの視覚要素を含めて、手抜きと思える部分はほとんどなかった。とは言え、移動時のストレスを極力減らしたいと思うようになってしまった僕としては、仕事のときにはもう使いたくないとも感じたな。時間をコントロールできてコストが重要になるプライベートの時には、気が変わるかもしれないけど。このようにユーザーが自発的にセグメンテーションしているってことは、空間デザインが本当によくできているって証拠だね。