はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

トロハの水路橋

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スペインの偉大な構造エンジニアであるエドゥアルド・トロハ(Eduardo Torroja, 1899-1961)によるアリオスの水路橋(Acueducto de Alloz, 1939)は、たいへん感動的な構造物だった。80年前につくられた軽快でシャープなコンクリート構造物は、構造面や経済面の合理性と造形的な美が高次で結びついている。まさに「構造デザイン」のお手本だね。

この水路橋の鑑賞ポイントは、どうやって少ない材料で水が漏れない水路を空中に通したか、ということ。例えば、9.4m+18.9m+9.4mという構造的にバランスに優れたユニットを連続させたり、その上縁部に後から張力を導入したケーブルを配置して軸方向の圧縮力を生み出したり、外側に鉄筋を配置した薄いU字断面のコンクリート桁の上部をターンバックルで緊張することで断面方向の圧縮力を生み出したりしているという。つまり、コンクリートがひび割れてはまずいところをギュッと締め付けて、全体の軽量化つまり経済性の向上を図っているのだ。洗濯ばさみやコンパスにも見えるX字型の細い橋脚は、水路をしっかり挟み込むように支持しており、結果的にこの橋の外観に強い個性を与えている。

この頃のスペインは、ずいぶん貧しかったようだ。なにしろ1936-39年のスペイン内戦によってすっかり疲弊していたわけで。書籍『エドゥアルド・トロハの構造デザイン』における川口衞氏の解説では、経済性に関するトロハの言説として「限られた予算の中でなんとか計画を実現しようとする懸命の努力の中から、しばしば優れた構造のアイデアが出てくるのだ」と書かれている。強力な制約が新たな技術や価値を生み出すという事実が、この水路橋からも読み取れるね。

 

エドゥアルド・トロハの構造デザイン

エドゥアルド・トロハの構造デザイン