はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

青森のオランダ

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八戸港の一部をなす新井田川の河口を豪快に跨ぐ八戸大橋は、おそらくこの都市の成り立ちを体感できる適地だろう。橋上をレンタカーで通過した際にそう感じたのだが、わざわざ車を降りて立ち寄るかどうかずいぶん悩んだ。なにしろ滞在時間も限られている状況で、地上からはそれなりの距離と高低差があるし、石油基地上に延々と続く落下物防止策によって視界も遮られるので。

それでも意を決してアプローチ部の桁下に行ってみると、迷っている場合ではなかったことを突きつけられた。まさかここはロッテルダムか?と疑いたくなるほど、ダッチ感に溢れているではないか。黄色と青のコンビネーションによる前衛的な配色、鋼橋と石油パイプラインという意外な要素の組み合わせ、極めて簡素なディテールが生み出す潔さ。ほとんど共感されることはないだろうが、個人的に魅力的だと思っているオランダの気配を感じてしまった。

八戸とオランダはなにか関係があるのかなあと思って調べようとしたとたんに、八戸港の計画に明治期にオランダから招聘したお雇い外国人のローウェンホルスト・ムルデルが関与していることが判明した。なんとそんなつながりがあっていたのか!とひとしきり感激したのだが、考えてみると近代日本の港湾整備や河川整備は全国レベルでオランダ人技士たちの影響が絶大なので、八戸に特有とは言えないよねえ。

ともかく、検索の途中で「八戸は青森のハワイ」という謎ワードを得つつも、個人的には「八戸は青森のオランダ」として勝手に認定したい。ちなみに地形的な面からすると、秋田の八郎潟はオランダそのものだったよ。