はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

熱海らしさ

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全く知らない町でも、意図的に自分の感度を上げて1時間くらいフラフラ歩き回っていると、なんとなくその町の特性が体に染みこんでくる気がする。次第に発見が増えていくというか解像感が増すというか、ともかくその街の風景の見え方がクリアになっていく感覚。コツを得てようやくこれからと盛り上がってきたところで、たいて時間が尽きてしまう。魅力的な眺めが満載の熱海であっても、やはりそのくらいの時間を要した。まあ今回は先に暑さでバテてしまったわけだが。

一時期の低迷期を経て人気がV字回復してきているという熱海は、思っていた以上に高低差が凄まじい土地だった。最盛期だったというバブル経済期前の雰囲気も、そこかしこに色濃く残っていた。無理やり接続された道路や路地の空間、昭和後半に建てられたであろう建物の地形をしれっと無視しているファサード、地形を無視しきれないディテールのおさまり、ようやくはじまった新陳代謝など、歩いている間に引き込まれたポイントがいくつもあった。

おそらく複雑な地形だけに複雑な土地形状になり、さまざまなスキマが発生しやすいのだろうね。水平方向にも鉛直方向にも豊かな様相で。そんな立体的なスキマに生じる現象をコレクションするように眺めていくと、もっともっと面白くなるんだろうなあと、後日写真を見返しながらようやく意識化できた。そして、上の情報量が多い写真が、僕の体験した熱海を凝縮して表象しているように思えてきた。取るに足らない街並みの写真のようだけど。

こうやって再訪したい街が増えていくんだよな、すでにもう回りきれないくらいに。