はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ティンタジェルへの旅

f:id:hachim:20200103200720j:plain

明けましておめでとうございます。

もともと弱い僕の記憶力は年が変わるたびに輪をかけてやばくなっている気がするけれど、10年以上も継続しているこのブログにはずいぶん助けられている。自分の外部に記録を残し続けることって、若い頃にはそんなに執着しなかったんだけど、振り返ったときに極めて有益になるんだなあと実感している。体験の記憶を容易に外部化できるって、情報化社会の重要な恩恵だね。そんなわけで、本年もダラダラとブログを続けようと思っている。

年末の「私的ドボク大賞2019」では『ティンタジェル城歩道橋』が受賞したわけだが、立地環境も含めて本当に見応えがある橋なので、これから訪問してみようかなあと思う方もおられるだろう。できたばかりだし。ところが、現地にたどり着くにはハードルがそこそこ高い。そこで、今回の旅で僕が得た留意点や反省点などを書き残しておこうと思う。年初なだけに、たまには誰かの役に立つ情報も書いておかないとね。もちろん旅のスタイルには大きな個人差はあるだろうから、自分流にアレンジしていただきたい。

【日程】
日本よりも高緯度なイギリスでは、当然のことながら、春や夏などの日照時間が長い時期に訪問した方がなにかと有利だろう。でも、渡航のタイミングは外的要因が重要だろうから、行けるときに行っちゃうフットワークが肝心だね。
主要都市から遠い場所ということもあり、滞在時間の設定に悩むと思うけど、予備日を設定して臨んだ方がいいと思う。この橋の特徴である広範囲かつ高低差のある数多くの視点場を巡り、多様な表情の橋をじっくり鑑賞することを強く意識するのがいいと思う。めったに行けない場所だしね。今回僕はティンタジェルに2泊したが、結果的に正解だった。
初日の朝はレンタカーでヒースロー空港を出発したが、ティンタジェルに到着したのは日がとっぷり暮れた夕方になってしまい、現場を見ることができなかった。本命に設定していた2日目は強い風雨のため、歩道橋は通行禁止になっていた。それでも雨雲レーダーを見ながらわずかな切れ目を狙って、遠くから谷越しに見下ろす場所や、海岸から見上げる場所などから鑑賞した。そして、予備日に設定していた3日目に、ようやく無事に渡る体験ができた。ホテルの宿泊客によると強風で橋が閉鎖される日も多いようなので、特に冬期は注意した方がいいだろう。
ちなみに夏期には別の問題があるようだ。イギリス人が大好きなアーサー王伝説に絡むティンタジェル城は大人気の観光地であり、入場規制がかかるほど混雑する日も多いらしい。事前に公式ウェブサイトから事前購入しておけば問題ないので、日が近くなってから天気予報を見据えつつ、日時を決めて予約することになるかもしれない。いずれにせよ予備日を確保しておけば、現地で臨機応変に対応できるだろう。

【行程】
いま調べてみたら、ロンドンとティンタジェルとの直線距離は約340km。東京から女川が同じくらいの距離だね。往路の走行距離は約440kmにもなる。なにしろイギリスにおけるGoogleマップのナビゲーションはデフォルトでマイル表記のため、渡航前にピンときにくい。僕の実感としても、ブリストル、エクセター、プリマスあたりまでは電車かバスで移動した方がいいと思ったな。
ティンタジェルは鉄道が通っていないので、現地周辺の交通手段は特に悩ましい。ティンタジェル城歩道橋だけを見に行くのであれば、バスを選択するのが賢明だろう。ついでに周辺エリアを見て回ろうとする場合にはレンタカー一択になるかな。イギリスは日本と同じ左側通行なので楽勝だろうと思っても、コーンウォールの丘陵地の道は少々手ごわいので、多少の覚悟は必要だ。なにしろカーブとアップダウンがやたらに多く、道幅も狭い。それと、おそらく煽り運転のつもりは全くないのだろうが、あちらのドライバーの車間距離の近さは大いにプレッシャーになる。ヒツジを囲う生け垣のプレッシャーもなかなかだし。それでも、レンタカーを走らせながら眺めるイギリスの田舎道の風景は、本当に楽しい。きっといい体験になるよ。
ちなみに僕が今回の旅で鉄道やバスを使わなかったのは、日程がクリスマス休暇にバッチリ重なってしまったという消極的な理由から。あちらの公共交通機関は12月24日の夜から25日にかけてはほぼ機能しなくなることを、やけに少ないマイレージで航空券を手配した後に気がついたのだ。さらに、都市間鉄道の料金設定が少々複雑で怖じ気づいてしまったこともある。今にして思えば、24日のうちに飛行機を乗り継いで、さっさとブリストルに入ればよかったかもなあと思っている。
もし僕が次に行くとすれば、ヒースロー空港からブリストルまでバスで移動して、数日宿泊してからレンタカーを借りてティンタジェルへのドライブを楽しむかな。旅の冒頭にいきなりレンタカーを借りるとストレスがたまるので、最初の数日間は都市部でバスやタクシーに乗り、現地の交通の雰囲気に慣れる行程にしたいしね。

【現地の地形】
最果て感がある海岸段丘はなかなかのものなので、それなりの距離と高低差を歩き回る覚悟をして行こう。上下2箇所にあるティンタジェル城趾の入口は、いずれも街の駐車場から20〜30分程度歩くことになる。ティンタジェル城跡は入場料が13ポンドで、そこそこ広く見どころも多いので、歩道橋だけを見るのではなく、のんびり散策するといいだろう。詳細は公式ウェブサイトを参照していただきたい。
ちなみに周辺の遊歩道、干潮時に入れる洞窟や滝がある海岸、たもとのトイレや飲食店ゾーンなどは無料エリアだ。悪天候だった初日は割り切って、無料でさまざまな眺望を楽しんだ。

【アーサー王の事前学習】
ティンタジェルに行くことを決めてから、あのアーサー王の生誕地と言われていることを認識した。聖杯伝説とか、円卓の騎士とか、聖剣エクスカリバーとかが登場する、現代のファンタジーの元祖にあたる中世騎士道物語の主役だ。これについては、多少なりとも勉強していった方が現地をより楽しめるだろう。僕もそのつもりでいたのだが、直前まで気持ちと時間のゆとりがもてず、ほったらかしにしてしまった。
渡航の直前に映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』を見直してみたものの、あまりにもバカバカしく(褒め称えている)、イギリス人の頭のおかしさを再認識したものの(褒め称えている)、予習としては不適切だったと言わざるを得ない。それでも、中世の雰囲気を少し味わっておいたことは、いい方向に作用したと思う。

【その他】
ドボクめぐりのようなマニアックな旅には、さまざまな段階で多くの留意点やコツがあるだろう。その一部は『ヨーロッパのドボクを見に行こう』の第7章「ドボク旅行のテクニック」にもそこそこ記載しているので、この際ぜひご参照いただきたい。

ずいぶん長くなってしまったけど、本年もよろしくお願いします。

 

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル [DVD]

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル [DVD]

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2002/03/21
  • メディア: DVD
 
ヨーロッパのドボクを見に行こう

ヨーロッパのドボクを見に行こう

  • 作者:八馬 智
  • 出版社/メーカー: 自由国民社
  • 発売日: 2015/06/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)