はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

アーチで補剛

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2014年に竣工した広島の太田川大橋は、僕の中にある単弦アーチ橋のスタンダードなイメージからかっこいい方向にシフトしているので、ずっと気になっていた。それは、わずかに低く見えるアーチライズ、透過性があって軽快な印象のアーチリブ、下部工と一体になったアーチ基部あたりに起因していると思う。その姿を先月、ようやく目視確認することができた。

写真で見ていた印象どおり、2連のアーチリブはシャープでかっこいい。このアーチリブはコンクリートが充填されたボックス構造の弦材を逆台形断面になるように上下に配置し、それを角形鋼管のブレースでつないでいる。強弱があるその部材構成は、力強いフォルムの中に軽快なリズムをもたらしている。明確な陰影の出方は面の向きによって異なるので、おそらく光環境の変化に伴って表情も豊かに変わるだろうね。大きなカーブを描く平面線形も、歩道からのアーチの見え方を楽しいものにしている。

この橋は一般的なアーチ橋ではなく、PC箱桁のラーメン橋をアーチで主桁を補剛するという、少々トリッキーな構造形式だ。その上、支点部を貫通するPCケーブルは高い位置とするフィンバック構造にもなっているらしい。なお、道路は河川に直交していないので、橋脚には若干のスキュー角が生じている。そんな複雑なこをとやっているのに、アーチの定着部が桁と橋脚にがっちり剛結されている支点部の造形はとても整っている。さすがに橋脚と桁との取り合いの造形は複雑なことになっていて涙ぐましいけれど、しっかりおさまっている。個人的には、アーチ天端を伝ってくる雨水の処理だけが残念ポイントかな。