はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

名塔に大空間を与えたEV

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あらためて写真を眺めても、エッフェル塔はすごいな。ここまで多くの人に感動を与えられる構造物も珍しいんじゃないか。誕生当時のディスられっぷりは凄まじかったようだが。

ひとつひとつの部材が極めて注意深く構成された肌理の細かさにも驚愕するけど、なんと言っても、重力と風力に抵抗すべく踏ん張る末広がりの4本の美脚から上半身が迷いなくシュッと立ち上がっていくフォルムが、たいへん魅力的だよね。そのフォルムを成立させているだけではなく、実際の空間体験においてスケールの変化にゾワッとなるのは、4面をアーチで囲まれた大空間が塔直下にあるためだろう。

この塔は登って街を見下ろすこと自体が建設の目的なので、徒歩以外で上に移動するための手段が不可欠だった。当然のようにエッフェルの設計チームは、中心にエレベーターを貫通させるなんて無粋なことはしなかった。斜めの足に沿ってあらかじめ、インクラインのように移動するエレベーターを設置したのだ。エレベーターの歴史は知らないけれど、きっと当時は「未来の乗り物」だったに違いない。

“La Tour De 300 Metres”というエッフェル塔の写真+図面集には、そんな斜行エレベーターの図面もしっかり掲載されている。この描き込みはかなり強烈で、ここでもゾワッとなる。見たこともない大型本で、発売当時は1万円くらいだったのだが。

 

La Tour De 300 Metres: Facsimile Edition

La Tour De 300 Metres: Facsimile Edition