はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

配達が切り拓く世界

f:id:hachim:20201011190824j:plain

スイスアルプスの峠を越える送電線の写真を、あれこれ編集してみた。「デス・ストランディング」というゲームの感動的で示唆的な仮想世界を、少しでも自分の実体験に近づけようとして。この送電線を見たときにも、隔てられた世界が「つながっている」ことに衝撃を受けたもんなあ。

このゲームをざっくり説明すると、天変地異や争いで分断された人々やコミュニティーを、ややこしい事情を背負っている「伝説の配達人」が、無茶なお使いを繰り返すことによって結び直すというものだ。言葉にしてみても、何のことだかさっぱりわからないな。でも、そのシナリオは、あまりにも重厚。7月末にはじめたのだが、最近になってようやくメインシナリオを終えた。今もその感動を噛みしめつつ、これまでつくった道路や橋梁や索道などの輸送インフラの維持管理を粛々と続けている。

怪物や亡霊や悪者などと戦ういかにもゲームらしいアクション要素もあるのだが、そこが本筋ではない。あくまでも、「物流」に関するさまざまなミッションの実現が重要。それらを通じて、生と死、肉体と魂、時間と空間、国家と個人といった、根源的で現実的な問いが重層的に突きつけられる仕掛けになっているのだ。それは基本的に謎だらけなのだが、あまりにも魅力的でバランスに優れた演出と、尋常ではなく作り込まれてた世界設定が、シナリオをがっちり支えている。そこから浮かび上がってくるリアリティは、まるで現実を凌駕しているような気分になる。

はじめてしばらくの間は、なにが起こっているのか全くわからず、オロオロしながら進行していった。日々の忙しさにかまけて、途中で話の筋を見失うことも多々あったし。でも、緻密で濃密なゲームは常に魅力的。進めていくうちに、目の前の世界が少しずつわかってくる。それは、知識による理解ではなく、体験による理解。そう言えば人の成長ってこんな感じだし、現実世界に直結する仕組みだし、人それぞれには固有の事情があるし、なんてことを思いつつ。

超絶長いエンディングは、感動のあまり涙を流しながらプレイしたな。あちこちでこの感動を伝えようとしているのだが、言語化できずに困っている。とにかくここ半年くらいで、現在のゲームってのはいろいろ凄まじいことがわかってきたので、今後もチェックが不可欠だね。