はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

可視化された物流

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インド洋と地中海を結ぶスエズ運河で大型のコンテナ船が座礁した事故は、発生から6日後にようやく航行再開に至った。懸命に続けられた離礁作業はもちろん、喜望峰ルートに舵を切った場合のコストなどのニュースをドキドキしながら見守っていた。船舶の航行データやコンテナ船の巨大さといった情報が、どんどん可視化されていったことが、よりハラハラ感を生み出しているように感じた。そして、太陽と地球と月の直線的関係がもたらす「スーパームーン」が潮位を引き上げたことが最後の一押しになったという、なんとも胸熱な展開だった。

今回はなんと言っても、現在の世界経済の明暗は海上物流にかかっており、それは、コンテナという規格と、スエズ運河とパナマ運河という大洋を結びつける巨大人工物に依存している事実を突きつけられた。さらに、損害保険の発祥は古代文明における海上保険であることや、近代保険の発祥もエドワード・ロイドが営むロンドンのコーヒー店における最新海事情報のやりとりだったという話を思い出した。

もちろん世界の物流が正常化するには、まだまだ時間がかかるだろう。思いのほか物流のリダンダンシーって高くはないのかもなあと、個々人が世界の海事についてもう少し意識しておかないと、不用意に慌てることになる。今回のような事故だけでなく、災害や紛争なども実際に起きているのだから。