はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

里山ファンタジー

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「多治見市モザイクタイルミュージアム」を設計した藤森照信氏による「ラコリーナ近江八幡」を訪れたのは、およそ1年半前。この施設をざっくり言うと、お菓子屋さんである「たねやグループ」による、お菓子と里山のイメージが織りなす世界観を堪能できるテーマパークだ。ここもまた、ワクワクとニヤニヤが止まらない場所だった。

語弊があるかもしれないが、自然の脅威や泥臭さなどの負の側面を平然と乗り越えて、宮崎アニメ的ファンタジーのテイストで上手にまとめ上げられているように感じた。ゆるいながらも骨太な独特の質感と、あざといまでに映え感に徹した演出の狭間で、大いに動揺した記憶がある。ここに来ている大勢の人々と、これまた極めて魅力的な旧市街との関係は、どの程度あるのかないのか、たいへん気になったな。

特に印象に残ったのは、エントランスのシークエンス景観。メインの敷地に入ったとたんに正面に見える建物は、その背景の山並みのスカイラインを切ることなく、ぴったりはまり込んでいる。この時点で一気に日常から分離される。歩を進めるにつれて建物の異様な存在が強くなり、スーッと夢の国に引き込まれていく。屋上緑化のメンテナンスはどうなのかという疑念など、あっという間に吹っ飛んでしまったな。

そうそう。この日は長年使っていたカメラが突然壊れてしまったんだよな。妻のカメラを借りて事なきを得たが、先ほど写真を眺め返していたときにザワザワと感じていた違和感は、ラコリーナ由来ではなく、カメラ由来だったんだな。