はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

サイバーパンク景観

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『サイバーパンク 2077』というゲームが発売は昨年12月に発売された。信じがたいほどにつくりこまれた世界観とグラフィックは、極めて魅力的。しかし、暴力的なアクション成分が高そうなために、怖じ気づいた僕はプレイしていない。

そもそもサイバーパンクというジャンルの根源には「なにが人を人たらしめるのか」というテーマがある。テクノロジーの高度化に伴い人の身体機能が肉体面も感覚面も拡張されることで、存在や記憶の意味がストレートに突きつけられるわけだ。小説、映画、アニメなどで繰り返し取り上げられてきたが、体験が強化できるゲームとの相性の良さは抜群に高いということは、容易に想像できる。

だからこそ、昨年からときどきお世話になっているライブドアニュースの「ゲームさんぽ」で取り上げてくれるのを、心待ちにしていた。ところが、専門家の調整が難航して企画が前に進んでいないようだった。そんなわけで僕から編集部に強く懇願して、本編のための視察、つまり、ロケハンを挙行してもらった。僕自身は初体験となる生配信となったわけだが、視聴者のことはさておき、ただただはしゃいで心から楽しんでしまった。なんという公私混同の俺得な回だろうか。

事前に一応、自分の中でサイバーパンクという世界観を概観しておきたいなあと思い、しばらく前から毎晩、「サイバーパンク景観」というハッシュタグで過去に撮った写真を加工して1ツイートするという行為を続けていた。以前から情報化社会の景観ってどんな切り口があるのかと、モヤモヤ考えていたということもあり、視覚的に自分の中に再取り込みしようと思ったわけだ。これが、写真の調整技術が手早くなったことや、しばらく不調だった体調がうっすら整ってきたという副次的な効果があって、個人的には都合のよい試みとなった。

人工的な要素が強い風景写真を過剰過激に加工すると、それっぽく仕上がる気がする。まだまだ言語化できる段階ではないが、おそらく、「目の前にある景観」ではなく、「記憶の中にありそうな景観」を再構成することが重要である気がした。扱う写真は繰り返し要素が多い人工空間や、二項対立のコントラストが明確な被写体とすることがわかりやすい。もちろん、ネオンや漢字の広告看板などの要素があると、安易ではあるがストレートにわかりやすくなる。具体的な写真の調整方法は、色温度を高めにする、緑かぶりの方向にする、彩度を高める、テクスチャや明瞭度を高めるといったもの。実体験感、つくりもの感、むきだしの欲望といったラインを見極めると良さそう。上の写真は、それらの方針や観点に基づいて加工した上海の浦東地区。

そんなこんなで写真加工のスキルは多少上がった気がするのだが、ロケハンにはほとんど活かされなかった。そんなもんだよね、事前準備なんて。直接役に立たないことが内包する価値を、積極的に受け止めていきたいもんね。

 


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