はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

駅前の居場所

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多治見駅北口にある「虎渓用水広場」は、一般的な駅前広場のイメージとはかけ離れた、常に水音が響く豊かな空間がある。わかる人にしか伝わらないだろうが、「あつまれ どうぶつの森」の良く出来た島のような、のんびりとしたイメージ。春にここを訪問した際、あまりにも居心地がいいので、うっかり長時間に及ぶリモート会議に参加してしまった。

多治見市街地は夏の暑さで有名な盆地にあり、その中でもここは最も低い場所に位置している。さらに掘り下げて、水が流れる高低差を生み出している。ここに流れる水は、多治見盆地を貫流する土岐川の上流から取水した、かつての豊かな農業用水を環境用水として位置付け直して使用している。しかも自然に環流するように、ポンプなどの動力に頼ることなく水を導き流しているとのこと。

かつて地域の歴史を支えた虎渓用水の価値を再発見し、これからの地域の核を再構築しようとして整備された質の高い空間。ここで友達と長時間過ごしている中高校生や、仲睦まじく語らうカップルたちが、新たな土地の記憶を引き継いでいくといいなあと心から思う素敵な場所だった。