はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

アーチを支えるアーチ

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スペインのログローニョでたまたま通りがかって見に行ったプラクセデス・マテオ・サガスタ橋(Puente de Práxedes Mateo Sagasta)は、とてもワクワクした。なにしろ、力の流れが魅力的な造形で可視化されているのだから。このような体験は、そう簡単に得られるものではない。

アーチという構造システムはそもそも、アーチがある面に生じる力にはめっぽう強いが、例えば横からの力など、いわゆる面外方向の剛性はほとんどないと考えてよい。リアルワールドでは、必ず生まれる風や振動や地震などに起因する力に対して、何らかの対応を行う必要があるわけだ。具体的には、アーチを二面にするとか、ペラペラのアーチではなく基部を外側に広げるとか。

で、この橋の解き方はとてもユニーク。基部がすぼまったアーチから車道が吊られている。同時に、車道から分離された歩道を吊っている。これにより、面外方向の力に拮抗するアンカーを確保しているようだ。おそらく、水平方向のアーチとしてさらに剛性を高めているのだろう。驚くのは、そんなトリッキーなことをやっているのに、造形面で破綻なく魅力的にまとめ上げられていることだ。スペイン人が育んできたのであろう立体造形感覚って、本当にすごいと思うね。