はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

鎮魂の軸線

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10月に気仙沼へ取材に行った際、どうしても行きたかった陸前高田の高田松原津波復興祈念公園にも足を伸ばした。最初の訪問時は高台造成のためのベルトコンベアが張り巡らされており、前回は施設のオープン直前だったので、ようやく落ち着いた状態を体験しに行ったわけだ。

低い建物の向こう側にある広大な空間に、力強い軸線によって導入される。こうした軸線は強烈な印象をもたらすことはわかっていたつもりだが、この景観体験は想像を超えていた。アイストップは、水平に広がる巨大な防潮堤。その先にあるはず太平洋は、この時点では全く見えない。ご神体は人為の防潮堤なのか、自然の海なのか。人々を海から切り離すのか、海と再び接続するのか。なかなか言葉にならないが、このシンプルで象徴的な構成がズシンと胸に響く。

広々とした芝生の広場を抜け、水面に架かる橋を渡る。防潮堤を上って、海を眺める。振り返って、陸前高田を囲む山々を見渡す。防潮堤の上を歩き、被災した震災遺構を眺める。こうした一連の体験が、訪問者それぞれの「祈り」に結びついていく。

何度でも行きたい、行かなければならない場所だった。