はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

地獄と極楽

彼方と此方の境界についてぼんやり考えていたら、数年前の下北出張の際に訪れた霊場恐山のことを思い出した。かなりインパクトのある景観体験だったのに、ブログには残していなかったんだなあ。

恐山固有の景観は、火山活動によってつくり出されてきた。あたりは硫黄の匂いに包まれており、恐山菩提寺の境内には温泉もあり、まさに五感で地球の活動を感じられる。境内の奥に広がるゴツゴツした岩の隙間から硫気ガスが噴き出す光景は、地獄のイメージがストレートに想起される。その先にあるカルデラ湖の宇曽利山湖は、白い砂浜とエメラルドグリーンの湖面が織りなす極楽のように幻想的な眺め。湛えられた強酸性の湖水に生き物はいないだろうと思っていたら、環境に適応したウグイが生息しているという。

地獄と極楽という極端な世界を同時に感じられる恐山は、死者をしのぶ祈りの地として昔から人々の信仰の対象になってきた。そのことが大いにうなずける、この世とあの世の境界の景観だね。