大阪で開催された『ヨーロッパのドボクを見てきた展』を見てきた。写真作家の水池葉子さんによる拙著『ヨーロッパのドボクを見に行こう』へのアンサーソングならぬアンサー展示だ。自分が出した本が他者の創作の刺激となり、実際に現地を訪れて写真を撮るという行為に至り、それが展覧会という形で実を結んだというわけだ。その事実に驚き、よろこび、感謝した。このときめきは、昨年の『日常の絶景』ドラマ化と同質のものだね。心から本を出して良かったなあと感じ入った。
展示は本と同様に、国別に分けてレイアウトや額の色に変化を持たせていた。つまり、景観に立ち上る文化が国ごとに異なるというコンセプトを、韻を踏むように踏襲してくださっていたのだ。そして、被写体の多くは僕の本に載っているもの。つまり僕自身もそこに行って写真を撮っている。このため、懐かしさを存分に味わうことができたとともに、自分の写真との違いを楽しむこともできた。
僕の写真はその対象物がどんなものであるかを記録することが目的であることに対して、水池さんの写真は作品として鑑賞者に何らかのメッセージを届けることが目的だ。それを完遂するために、実体のあるプリントを額装して壁面に掲げ、空間にレイアウトしているわけだ。このことは、写真に対する向き合い方を模索中の僕にとって、いろいろと腑に落ちるものであり、とても大きな刺激になった。
別のプロジェクトの写真集をいくつもじっくり拝見し、それらの制作に関するお話しを伺うこともできた。さらに、来場された方々ともお話しをする機会もいただけた。そして高揚感の中で、僕も写真の展示や写真集の制作にチャレンジしたくなった。これは、今後なにかに展開していくものなのだろうか。
水池さん、この度はとても魅力的な写真作品で構成されたアンサー展示を開催してくださり、どうもありがとうございました。今年の9月に発売となる写真集『のら』を楽しみにしています。