日が暮れかけた高松の街でホテルに向かって歩いていると、横目に見えた駐車場の奥の壁面に視線が釘付けになった。明暗のコントラストが効いたランダムな模様と規則的な縦のラインから、野趣味溢れる強烈なインパクトを感じたのだ。これはなかなかお目にかかれない傑作であろうと思い、翌朝あらためて鑑賞してきた。
詳細に観察してみると、壁面はベニヤ板と縦の角材で構成されており、ベニヤの表面は劣化が進み、一枚ずつ異なるテクスチャーが生まれている。おそらくは奥の建物を建設する際に、手前側にあった建物との離隔距離が取れなかったことから、コンクリート型枠がそのまま存置されたいわゆる埋め殺し型枠なのであろう。手前側の建物が撤去されたことで、うっかり露わになったんだと思う。
それにしても特筆すべきは、型枠パネルの細かさと素材の不統一さだ。ここぞとばかりに端材を投入したのではないかと思えるほどだ。それによって、独自の魅力的な雰囲気を獲得している。極めて高度な「巧まざる造形」と言えるだろう。
これに近い成り立ちの壁面は、高松市街地でいくつか発見できた。高松にはよくある工法なのか、西日本ではあたりまえの工法なのか、僕がこれまで気がつかなかっただけなのか、そこら辺の情報をなかなか獲得できていない。継続して観察と情報収集をしていかねば。