このところ、立て続けに東北地方を訪れている。先週末は、とても楽しいまち歩きイベントにお呼びいただき、秋田に行ってきた。滞在中はおいしい食事やお酒をたっぷり味わい、僕が萌えるスポットにいくつも連れて行っていただいた。そのひとつが、にかほ市の上郷地区にある「温水路」。以前から拝んでみたいと思っていた施設なので、お誘いいただいた時に小躍りした。
この地はかねてより鳥海山の融雪水によって稲作を行ってきた。しかし水温が低すぎることが、稲の生育を阻む要因になっていた。その問題を解消するために、太陽の光を利用して水温を上げるべく、流路の幅を拡げて水深を浅くし、数多くの段差を設けて水の流れを遅くすることを実践した。それは、ここの集落の人々が自ら考案し、自ら建設したものという。そして1927(昭和2)年に完成したのが、延長648mの長岡温水路。その絶大な効果を受けて、このエリアでは次々と温水路がつくられていき、収穫量が増加した。
階段状の水路と言えば、小樽の奥沢水源地にある階段式溢流路や、松本の牛伏川にあるフランス式階段工を想起する。前者は水道用ダムの高低差で生じる流れの速さを軽減するための水利施設、後者は土砂の勢いを低減するための砂防施設。大きな目的は異なるが、同様の解決策となっていることは、自然の現象に真っ向から対峙している土木施設ならではと言えるかもしれないね。そんなことを考えながらじっくり眺めていると、心が洗われるような気分になった。