かつてはどこにでもあった、タコのすべり台。いま見ても、ときめいてしまう。あまり見かけなくなった気がするのは、自分が公園遊具で遊ばなくなったからだと思っていたが、現在の公園遊具の基準に合わずに新設されないまま、老朽化で撤去されているために、その数は減っているようだ。
少し気になったので来歴をネットで検索していたら、裁判沙汰になっていたことを知った。それは、タコのすべり台は著作物としての保護すべき芸術品かを争点に、よく似たタコのすべり台をつくった遊具メーカーを、オリジナルをつくった遊具メーカーが訴えたもの。2021年に判決が出され、すべり台の著作物該当性が否定され、原告の請求が棄却された。
判決文を斜めに読むと、造形要素は遊具として実用に供されるための要件から来るものであって、美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているわけではないということのようだ。裁判の文章って、僕にはよくわからないのだが。札幌の大通公園にある、イサム・ノグチによるすべり台「ブラック・スライド・マントラ」は、誰がどう見ても高度に芸術的な著作物なんだろうけど。ここら辺の問題に明確な線を引くことって、なかなか難しいのだなあと、あらためて感じたな。デザインには大なり小なりつきまとう問題なだけに、もう少し理解を進めないと行けないのかな。
上の写真は、岡山市内の公園で見かけたタコ。直前に前川國男による「天神山文化プラザ」を緊張感を持ってがっつり観たこともあり、極度に脱力したことを憶えている。どこかだらしない造形は、ちょっとホッコリするよね。