はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

垢抜けた閘門

先日、『江東区のメタ観光』というシンポジウムに参加した。今年の初夏に開催されたまち歩きワークショップの総括として、それぞれの回の講師9組10名が一堂に会したイベントだ。暗渠、電線、行き止まり、路上園芸など、ディープで尖ったテーマを日夜掘り下げている方々とのやりとりはとても刺激的で、打ち上げも含めてとても有意義な時間を過ごすことができた。

イベントが始まる直前に少し時間ができたので、会場のすぐそばにある「扇橋閘門」を見に行った。この水門がある小名木川は隅田川よりも水位が低いのに、船の通行を可能にするためのエレベーターのような施設。その仕組みは、パナマ運河と同じだ。

僕の記憶の中にある扇橋閘門は、威風堂々と真っ赤なゲートが吊り下げられた、なんとも無骨なものだった。ところが、グレーを基調とするゲートや桁、ガラス張りの機械室、シンプルモダンな管理棟、気持ちよく散歩できる遊歩道など、すっかり見違えていた。あらあら、すっかり垢抜けちゃって。しばらく見ないうちに成人した姪っ子に会ったような感慨にふけった。

過去の写真を参照すると、僕が扇橋閘門を見学させてもらったのが2008年、船で通過した最後が2012年だった。リニューアルについて簡単に調べてみると、2017年から行われた耐震補強工事によって、現在の姿に生まれ変わったようだ。ほぼつくり直しているんじゃないかという規模で行われた改修工事は、それはそれで興味深い。かつて工場だった場所が大規模マンションになるなど、周辺環境も大きく変わったことが確認できた。

既存のインフラ施設を改修しながら使い続けることはとても重要なことではあるが、あの野暮ったさがなくなってしまったのかと思うと、かすかな寂しさも感じるね。