はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

安寧の地にて

国道14・357号沿いの埋立地に構える歴史的風格がムンムン漂う寺社建築風の建物の正面に、トヨタのエンブレムが燦然と輝いている。これは、千葉トヨペットの本社屋だ。一瞬悪趣味な方向なのかと身構えてしまうが、そんなことはない。国の有形文化財にも登録されている、由緒正しき歴史的建築物である。

なにしろ、もともとは1899(明治32)年、日比谷公園の前に「日本勧業銀行本店」として建てられたもの。しかも、当時のスター建築家である妻木頼黄と武田五一が共同で設計したという。そんな貴重な建物が壊されることなく移築され、ばっちり活用されてよかったねという話なのだけど、実際はもう少し濃厚で、何度も転職を繰り返しているのだ。

1926(大正15)年に現京成電鉄によって買い取られ、習志野市の谷津遊園にて「楽天府」という名で撮影所となり、さらには遊技場、食堂、演芸場などを兼ねた娯楽複合施設となったらしい。1940(昭和15)年に現在千葉都市モノレール終点駅の前の千葉県警察本部がある場所に、千葉市役所庁舎として移された。そして1965(昭和40)年、千葉市内で復元保存することを条件に千葉トヨペットが無償で譲り受け、できるだけオリジナルの姿を留めながら、構造を鉄筋コンクリートに変えるなどの改修を経て、本社屋として現在の地に根付いたという。

それから60年。近代化、戦争、敗戦、高度経済成長といった時代のうねりの中で、その役割を少しずつ変えていくきた建物には、意志のようなものが宿っているのかも知れない。現代社会に適合するように大幅な改修がなされているものの、きっと幸せな建築物だよね。ギャップ萌えも素敵だし。