はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

三次元で解く

円弧を描く桁にアーチの特性を加味して、上手いこと成立させた桁のことを「リングガーダー」と呼ぶ。桁が外側に回転しようとする力を、桁の内側上部のリングを平面的に引っ張ってバランスさせるものだ。なにを言っているのかわからないかもしれないが、それは僕がよく理解していないからに他ならない。

言い訳をしておくと、平面で考えられる二次元までは理解できても、立体で考えなければならない三次元となるとなかなか理解できないというのが、人の認知特性ってもんだよね。実際の世界は三次元空間で構成されているので、三次元で考えた方がなにかと効率がよいはず。考えるのがとても難しいんだけど。世界のトッププロはその困難にチャレンジしてきた。その筆頭格の構造エンジニアが、ヨルク・シュライヒ(1934-2021)である。

上の写真は、1988年につくられた「ケールハイム歩道橋」。ライン・マイン・ドナウ運河の工事に伴って、最大勾配10%の自転車歩行者用のルートをつくるため、大きなリングを描く構造で解決したもの。運河を通す前に建設用足場を組めたために、プレストレストコンクリート桁が採用できたようだ。カーブの外側に設置した2つのタワーを傾斜させて、カーブの内側をケーブルによって吊り上げている。そのケーブルは橋台にアンカーされている。とてもトリッキーな構造なので、力の流れがなかなか読み取れない。魔法がかけられているように思えるよね。

シュライヒはこの後もリングガーダーの可能性を探り続け、いくつもの歩道橋の設計を手がけている。巨大なサッカー場の屋根なども同様の考えでつくり続けているので、ワールドカップをテレビ観戦するときの大きな見どころのひとつになっている。個人的には。

また、昨日から公開されているゲームさんぽの『ぽ講』という番組で、いくつかのバリエーションをご覧いただくことができるよ。ニコニコ動画プレミアム会員限定だけど。