はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

人工自然河川空間

極めて充実したオランダ旅行から戻り、ウキウキした気分で日常を過ごしているつもりではいるのだが、よく考えると忙しい状況。そこそこの期間を空けていたために仕事が溜まっていたことや、職場である大学の授業が再開したことが要因だよね。まあ予想はしていたものの、オランダ旅行の記憶を定着させるための振り返りが満足にできないことは、僕にとって大問題だ。心を入れ替えて、最優先で取り組まねば。

今回の旅での大きな目的のひとつは、「Room for the River(Ruimte voor de Rivier)」という壮大な治水事業を体感すること。この事業をものすごくざっくり説明すると、洪水時の大量の水の居場所を、あの手この手であらかじめつくり出しておいて、都市への流入を防ごうというもの。オランダは国内だけでなく、近接する国に降った豪雨が集まる低地であり、従来の堤防に頼る治水では不十分になっているためだ。そこに生態系、景観、アクティビティなどの現代的な要素を練り込みながら、統合的な事業が長期に渡って実施されている。10年前にもその断片を見ていたが、常々進捗した状況も実際に見たいと思っていたわけだ。

「Room for the River」の代表的なプロジェクトとして、ナイメーヘンにおけるワール川のプロジェクトがある。堤防の後退、バイパス流路の掘削、中州の造成、河岸公園の整備、橋梁の整備などが含まれる総合的なもの。過去にナイメーヘンの街を訪れた際は事業の途中段階だったが、現在は概ね完了しているようだ。もともとそこにあったかのような風景に、予定通りに驚愕し、大陸のスケール感にあらためてビビった。

上の写真は、後から掘削された人工流路を跨ぐNey & Partnersによる「De Lentloper」、奥に見える橋はZJAによる「Verlengde Waalbrug」。どちらも陸地だったから実現した複雑な造形のコンクリート橋。その成り立ちからしても、オランダ的な合理精神が感じられる。夕日に映える姿は感動的だったなあ。