はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

スロープ鑑賞

緩やかな傾斜に面した店舗の前で、路面との段差を解消している縞鋼板のスロープをゆっくり鑑賞する。立ち止まって、いろんな角度から、時間をかけて眺めることが大きなポイントだ。もちろん写真で記録することも怠らずに。たとえ、通行人に訝しがられても。

手前側の傾斜している面が最も広い面積を有している。路面が斜めになっていることから、その面は必然的に左側が短く、右側が長い台形になっている。その両サイドは、L型側溝に合わせた三角形の面と段差に合わせた四角形の面が溶接され、もちろん左右で大きさが異なっている。見応えたっぷりの造形を実現した丁寧な仕事っぷりは、柳宗悦が提唱した「民藝」に通じる深みのある鑑賞体験を与えてくれる。そんな気がしてくる。

さらに特筆すべき事象は、傾斜面の左下には凹みが生じており、溶接も破断していること。左側の短い距離は荷重に耐えられたが、右側の長い距離は荷重に耐えられなかったということを目の当たりにする。

いかに人は段差を忌避して水平面を求めるのか、こうした試みが街の中に無限に存在することから理解することができる。そして、無名の作家がその力量を振るっても、作用する力の原理は避けられないことも読み取れる。ゆっくり鑑賞すると、世界がなんとも言えない愛おしさに溢れている気分に浸ることができる。たぶん。