はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

低地の国の治水

オランダの「Room for the River (Ruimte voor de Rivier)」プロジェクトの中でも最大級とされる「High Water Channel (Hoogwatergeul) Veessen-Wapenveld」を見に行った。これは、写真右側を流れているアイセル川が増水したときに、膨大な量の水を受け入れる巨大な遊水池というか巨大なバイパス水路のようなものだ。流路を掘削したのではなく、長大な堤防を築くことで実現している。

平常時のこの広い平地は農地などに利用されており、部分的に鳥類保護区に指定されているようだ。堤防はサイクリングコースになっており、堤内地に新設された水路はカヌーなどのアクティビティにも活用されているらしい。そのあたりがこの仕組みの重要なポイントでもある。川に余地(room)を与えることで、自然の営みと人間の暮らしを両立させようとする思想がよく伝わってくる。

写真手前の農地はそこそこの頻度で冠水するっぽく、ネット上でその様子を捉えた写真をいくつも発見することができた。さらに100年に一度の確率で生じる大洪水の際には、写真奥にある長さ約800mの橋に備えられた60枚の水門を開放して、延長が約8kmで幅が約500m〜1,500mの広大な農地を意図的に水没させるという。なんともスケールが大きくて、ピンとこないよねえ。

その状況は、左側のベンチの前の通路に埋め込まれた鉄のプレートによって図示されている。そもそもこのベンチはどこを向いているのか謎だったが、もしかすると増水時の広大な水面を眺めるものなのかもしれない。常時も非常時も、そのすべての風景を受け入れて楽しもうとするオランダ人の姿勢がすごい。